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新見のコケの群棲地について
1
名前:
収斂
投稿日: 2002/01/29(火) 01:43
最近この掲示板に新しく来ていただく方々が多くなりましたので、あらためて解説いたします。
実は1〜2年ほど前に、私と浦に〜とさんで、日本国内で世界遺産運動している場所はいくつあるのか調べ、その一覧表を作成したことがあります。これらの情報は各種雑誌やテレビ等のマスメディア、HP、さらにこのBBSに寄せられた情報を参考にしました。調査後に世界遺産化された沖縄のグスクや暫定リストに登録された3つの物件(熊野古道、平泉、石見銀山)はもちろん含まれています。また調査後に新たに名乗りを挙げた物件(長崎の近代教会群、長野の善光寺、松本城、岐阜県根尾村の活断層)、実際は運動をしてなかった物件(松島、能登の千枚田)、運動するといったのに現在ほとんど運動していない物件(妻木晩田遺跡、吉野ヶ里遺跡)などがあるため、きっと現在でも国内には40箇所前後の候補地があるのでしょう。
その中に、新見コケの群棲地があります。
先週、私は岡山県の津山市に仕事で出かけていました。その大切な仕事は24日(木曜)の2時ごろ終わり、その後、以前からこの掲示板でも問題になっていた新見のコケの群棲地について研究している教育機関に行ってみました。今回その情報について報告いたします。
2
名前:
収斂
投稿日: 2002/01/29(火) 01:45
新見に貴重なコケの群棲地があるという情報は、私が5〜6年くらい前に、ズームイン朝というテレビ番組でちらっと知った程度の物件でした。もとも新見市はカルスト大地の上に存在し、多くの鍾乳洞やドリーネという円錐状の竪穴があります。そこには洞窟からの冷気がたえず吹き出し、日光が全くといっていいほど射し込まないため、洞窟入り口周辺だけに霧が発生し、常に低温・高湿度の状態が保たれていました。そのため氷河時代の生き残りとみられる貴重なコケが現在でも生き残っていました。しかし30年くらい前の観光開発で付近まで道路を造り、木を伐採したため、霧が発生しにくくなり、さらに洞窟内部に観光客を入れるため入口を大きくしたため、冷気が弱くなり、湿度が下がってしまいました。そのため、貴重なコケの集落が大幅に減少し、絶滅の危機に瀕しています。現在では洞窟周辺一帯は立ち入り禁止になっていますが、ほとんどコケは回復していない状況です。それでも現在でもこの一帯に200種くらいのコケが棲息しているといわれています。(調査自体が貴重なコケを傷つける可能性があるため、近年はほとんど調査が行われていない。そのため現時点では160種くらいとか、もっと少なくなったとか、いろいろ意見がある。)
現在、このコケをフラスコ内で培養し、成長してから現地に移植する取り組みが行われています。そしてその活動を行っている機関こそ新見北高校という地元の高校です。当時、世界遺産とは関係なく、この活動は脚光をあび、多くの取材がこの高校に殺到したそうです。
私は今回、津山に来た機会に、この新見北高校に訪問し、生物資源学科のM教諭から貴重な話を多く伺いました。新見北高校の保存研究は平成8年から行われているそうです。
今回このBBSにおいてその一部始終をお知らせしたいと思います。
その前に新見北高校の関係者皆様に厚く御礼申し上げます。
専門家ではなく、ただ個人的関心しかない私のような者に、今までの成果・問題点を詳細に1時間以上も、教えてくださったM先生には本当に心から感謝いたします。ありがとうございました。
3
名前:
収斂
投稿日: 2002/01/29(火) 01:49
新見のコケの群棲地について
ここでは群棲地の正確な場所は明かさないことにします。現在、ドリーネ最深部は立ち入り禁止ですが、その近くまでは観光名所になっているためです。幸い、知名度がいまいちらしく、観光客は少なく、それが幸いして、現状は保護が決定した時点の状態を辛うじて保っているそうです。
50年くらい前は、ここは人が入る場所ではないので、周辺一帯はコケがものすごかったそうです。この当時の状態なら、間違いなく世界遺産化されていたそうです。とくにサガリゴケというコケが、叙木に蔦のように絡まってカーテンのような状態だったそうです。現在はこのサガリゴケも樹皮などにわずかに見られるにすぎません。
<周辺付近の地形>
石灰岩大地は浸食され、やがて大きな洞窟ができます。さらに時間が経過すると洞窟は大きくなり、地面の重みに耐えきれず崩落します。そうしてところどころに、かっての洞窟の名残が、アーチ橋のように残ります。コケの群棲地は、そういう陥没した地形の底部にあります。さらにそこにドリーネという円錐状の穴が形成された場所があり、その最深部に、横穴が伸びている場所があります。ここからは冷気がたえず吹き出しています。そのため、平地の気温が夏の30℃でも、このドリーネ最深部は常に12℃くらいに保たれているそうです。このドリーネの大きさはせいぜい直径20メートルくらいですが、この狭い空間に高地性、もしくは北方系のコケが生き残っています。またドリーネではなくても、その周辺一帯は陥没によって平地より低く、日光がほとんど当たらないためコケの種類が多く密集しています。このコケをここでは南方系のコケと呼ぶことにし、ドリーネ深部の北方系のコケと区別して呼びます。
つまりこの一帯は、狭い空間で、南方系から寒冷地域のコケが同時に見られる貴重な場所なのです。ちなみに北方系のコケが全て絶滅危惧種のように重要というわけではありません。しかし、この新見一帯の標高は400〜500メートルですが、剣山の1600メートル以上の高地にしか見られないコケもここでは見られるのです。
特にイギイチョウゴケは絶滅危惧種であり、現在では発見する今年ら難しいそうです。またセイナンヒラゴケ、リボンゴケ、トサノサガリゴケのような北方系のコケは成長が遅く、年間数ミリしか生長しないため、一度数が減少すると、なかなか回復しないそうです。
4
名前:
収斂
投稿日: 2002/01/29(火) 01:50
<復元の成果と問題点>
現在コケの復元は新見北高校で行われていますが、ノウハウは岡山理科大学の西村先生(コケの分類学の権威)、川崎市の平岡環境科学研究所(培養の分野の我国の先端的な研究機関)の合同で行われています。また連絡会として新見市の文化財審議会委員の一人で洞窟学を専門とする柴田先生がいらっしゃいます。たいていのことはこの柴田先生が窓口になっているそうです。
コケの培養の成果と現状は、かなり困難を極めているそうです。新見北高校では20種のコケを培養してきました。新聞報道では全てに大きな成果があったように報じられましたが、しかし成果があったのは南方系のコケだけで、北方系のコケは全然うまくいっていないそうです。原因は湿度管理が難しいからではないかというM先生の話でした。ちなみに最近の温暖化の影響も伺いましたが、ドリーネ深部の気温は今でも、調査を開始した時点とほとんど変り無く、コケの生育にあまり問題がないみたいだそうです。そのためコケの生育環境として湿度こそが重要な要素であるという考えをお持ちでした。北方系のコケの生育には最低でも80%以上、だいたい90%くらいの湿度が保たれていることが必須条件らしく、それはフラスコ内の培養では難しいとのことでした。
現在、伐採した木があった場所を、植林によって環境を回復しようという取り組みは行われていません。それには二つの問題があるからだそうです。一つは地権の問題です。一帯は国の天然記念物に指定されているそうですが、木が生えてあった場所は新見市に属するそうです。そのため費用負担とか手続きとかが煩雑で、全然進展していないそうです。もう一つは、どういう種類の木を植えたらいいのか不明なのです。当時の現状を回復するために植えた木が、さらに環境を悪化させる心配もあるのです。
また新見北高校もこの北方系のコケの培養は難しく高校では無理であるとして、今までの経験を生かして、実用的なミズゴケの育種に研究をシフトしつつあるそうです。
5
名前:
収斂
投稿日: 2002/01/29(火) 02:01
<総括>
私は、この絶滅危惧種のコケの培養を行う新見北高校に最大の賛辞を贈りたいと思います。すばらしい高校です。高校でここまでやれるなんて驚異です。関係者の皆様に脱帽いたします。
私は、このコケの群棲地保護と貴重種の培養の研究は、大学の研究機関が引継ぎ、国や自治体も積極的に支援することを希望します。
さらに、このコケの群棲地は知名度が無さすぎます。地元岡山でもほとんど知られていません。これでは問題解決できません。一帯の入山制限をした上で、ある程度の知名度をあげる必要を感じました。湿度の管理は大学の研究室レベルの装置があれば、そんなに難しい問題ではありません。この情報を新見市はもっと大きく発信すれば、共同研究を申し出る研究室はたくさんあると思います。
また植樹についての一番の問題は地権だそうですが、そういう問題に費やしている間にコケが絶滅したら話しになりません。早急に対処して欲しいです。伐採当時の自然環境は、写真等で判明できるはずです。
最後になりましたが、もしこのHPを見ている新見北高校の生徒さんがいらっしゃいましたら、あなたがたは自分の高校を誇りに思ってください。これは国内の自然保護運動をしているからすばらしいのではなく、世界中のだれからも賞賛されるようなすばらしいことを行っているのです。今後の成果を期待いたします。
新見北高校
http://www.niimikit.ed.pref.okayama.jp/niimik.htm
岡山コケの会
http://homepage1.nifty.com/okamoss/
財団法人 平岡環境科学研究所
http://hiraokaken.or.jp/
日本蘚苔類学会
http://sc1.cc.kochi-u.ac.jp/~bryosoc/
6
名前:
収斂
投稿日: 2002/01/29(火) 02:13
訂正
お詫びして訂正いたします。
スレッド2
もとも新見市は−>もともと新見市は
生物資源学科 −>生物生産科
スレッド3
叙木に蔦のように−>樹木に蔦のように
7
名前:
perdido
投稿日: 2002/01/30(水) 21:16
収斂さん>
自分の郷里である長野県佐久市は、国の天然記念物のヒカリゴケ自生地があります。前レスをよみながら、小学生か中学生の頃、「旧中込学校」とともに「佐久市の文化財」という冊子の巻頭カラーでのっていたのを思い出しました。
どのくらい貴重なものなのでしょうか?
8
名前:
浦に〜と
投稿日: 2002/02/12(火) 09:30
この新見のコケ群生地に関して、私はほとんど知りません。ここは昔の状態だったら、日本の自然遺産第一号だったろうとも言われるようですが、そう言われても一体どれほどのものなのかよく分かりません。寒冷地の氷河期のコケの生き残りといって国の天然記念物になっているというこれは、世界的にも珍しいものなのでしょうか。
それからコケの量が半減しても、顕著で普遍的重要性という観点でなら世界遺産になれるのではないでしょうか。あとは面積の問題とかもあるかもしれませんが。
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